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「そうか…車イスのほうは…だめか」
「このレベルの損傷だと復元して調査するのは難しいわね」
二人は、グシャグシャにひしゃげた車イスを見て話す。
「…順調には行かないな…」
ホリディはそう言いながら腕の専用端末でキングに連絡する。
フローネン劇場のゴミ処理場で、切断されていたアンドロイドを調査しているキングが応答する。
『キングだ』
「遺体を鑑定した結果他殺の線は薄そうなんだ。目立つ外傷がない」
『そうか、報告感謝する』
キングはいつも通り冷静に答え、通信を切った。
一方、遺体現場近くの窓ガラスが割られたビルを調べているファイスは、ビルの管理人に会っていた。どうやら事件当時の監視カメラを確認してるようだ。
「暗いな…」
事件当時のカメラには、車イス姿の女性が窓際で外を見ている様子が映っていた。しかし、この部屋だけ異様に暗く、部屋の内装が捉えられない。
「この部屋は、普段倉庫に使っているので、監視カメラの点検を行っていないんですよ」
小太りの火星人ハーフの管理人が言う。
その時、監視カメラに写っていた車イスの女性が、後退し、勢いよく窓ガラスに突っ込み、ビルから落ちた。
「車イスの誤作動か…?もう一度再生できます?」
管理人はファイスの指示で再生ボタンを押す。
「赤いランプが点滅している…」
ファイスが車イスのランプに気付いた。
フローネン劇場----ゴミ処理場---
散らばっていたアンドロイドの破片を集め、人型に並べた。
「まさか、コリンはこのことを知って…?」
サズが切断されたアンドロイドを見て言った。
「…」
キングはこの状況に違和感を感じていた。腕を組み顎に指を添えて推理する。
「私、聞き込みに行ってきます」
リーンはそう言って、ごみ処理場を後にした。
「まだ調べられます?」
ロールがキングに問いかける。
「あぁ、少しだけ」
「私たちは、状況を団員とスタッフに伝えてくるわ」
「鍵をお渡しするので、出るときは閉めてください」
ロールがキングに長方形の鍵を渡し、サズと共に去る。
一人ゴミ処理場に残ったキングは辺りを調べる。すると、アンドロイドを引きずったようにみられる跡が、ごみ処理場の壁際に付いていた。どうやらオイルのようだ。地面に慕ったオイルには足跡があった。
キングは腕の専用端末を調査モードに切り替え、オイルに付いている足跡をライトで照らす。
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