episode3 「犠体」

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この調査モードとは、対象物に特殊な光を浴びせることで端末が自動でネットワーク調査し、参考になる情報を展開してくれるツールだ。 足跡を読み取った端末から靴の情報が出てきた。バーチャルではあるが、画像を3Dで展開できる。靴の脇にDのマークが入ったスニーカーで、主に体育館やステージで練習用に用いられている。足跡の靴は右側が異様に擦り減っていた。 「この靴…」 ロールとサズも同じメーカーの物を履いていたのだ。 リーンは警備員やスタッフに聞き込みをしていた。 どうやら劇場の管理人の話によると、ごみ処理場は、巨大な換気扇の音が邪魔をしていて中の音が外部に漏れることは無いと言う。 「変な話、中で何かをしていても気付く人はいない…?」 「そうだな、あの換気扇の音は廊下まで聞こえてくるから、回してしまえばね」 「わかりました…ありがとうございます!」 リーンは一礼して、キングに連絡する。 「キングさん。どうやらあの巨大な換気扇の音が色々もみ消してしまうようです」 『仮にこの場でアンドロイドを破壊しても、外部には気付かれない…。合流できるか?気になることを見つけた』 「わかりました」 二人はごみ処理場に繋がる階段を上がったところで落ち合った。 キングは換気扇を回して、音の検証がてら合流場所に来ていた。 「これ、換気扇の音ですか?」 「あぁ、この階段の下の出来事全てを消し去る音だ」 「そうだ、気になることって?」 「これを見てくれ」 キングは、先ほど読み取ったスニーカーの情報を専用端末で開いた。 「このスニーカー…劇団のみなさんが履いていました」 「ゴミ処理場に残っていた足跡だ。地面に零れたオイルを踏んでいる」 「さっき二人が来た時に付いたものでは?」 「壁際にアンドロイドのパーツを引きずったような跡、その際に零れていたアンドロイドのものとみられるオイルに付いていた。あの二人は俺たちとほぼ同じ場所を歩いていたはずだ」 「…確かにずっと同じ場所に立っていましたね。少なくとも壁際には行っていない」 「そして足跡の靴底は右側が擦り減っていた。これが鍵になりそうだ。早速調べるぞ」 「はい!」
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