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「亡骸の調子は?」
ホリディがいつもの調子でゾイに聞く。
「無口なのは確かね。喉の傷跡を見て」
ゾイが鑑識専用端末でパックリと開いた喉をスキャンし、壁に投影した。
このツールは、遺体の傷跡の形から使われた凶器を瞬時に検索して、鮮明な画像で表示してくれる。局の情報ネットワークとリンクしているため、局内でしかその効果を発揮しない。
「まぁ、ナイフだろうな」
表示された凶器はナイフのようだ。ホリディは投影された情報を見ながら言った。
「持ち手の部分を拡大できるか?」
キングは何かに気付いたようだ。
「さすがキングね。「O」の文字が彫られているわ。これは、宗教団体「O」の信者にのみ持たされる短剣よ」
「「O」の信者である証明のような物だ」
キングがホリディに説明した。
「何百年も前に使われていた十字架のような物か?」
「旧世界ではロザリオと呼んでいたらしい」
ホリディの質問にクールに答えるキング。
「「O」の信者が犯人と見ていいべきか…信者になりすまし、「O」に濡れぎぬを着せているか…」
キングは、腕を組み深刻な表情を浮かべた。
一方、殺害されたサクナの身元を詳しく調べているリーンは、自分のデスクで捜査資料を見ていた。
「南都市12エリアに在住…二度、離婚しているのね」
その時、リーンのデスクに通信が入る。女性の先輩捜査官パスラ・イブからだ。
彼女は面倒見が良く、局でも尊敬されている。
「事件を持ち帰ってきたそうね…応援いる?」
「…その…はい」
言わば美女であり先輩であり、局の人気者パスラ。リーンは緊張しつつも応援を希望した。
「そんなに固くならない!そっちに行くわね」
「ありがとう…ございます」
リーンは通信を切り、ほっと一息ついた。
キングは、局内の資料室で宗教団体「O」について調べていた。
データ化された書籍で覆いつくされた資料室。検索ワードを口にするだけで資料が絞られ、部屋全面で閲覧できるようなシステムだ。指示すればAIが音読もしてくれる。
「宗教団体「O」。活動内容。音声解説で頼む」
検索ワードを口にし、情報を絞るキング。
するとワードがヒットし、活動内容のページが開かれた。
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