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「月に2度くらいしか帰ってこない生活が5年以上続いていますから、あまり関心しなくなっていて…それに夫を恨む連中もいて、正直あまり関わりたくなかったのです」
「もっと詳しく教えてもらえますか」
「「O」ってご存知ですか?」
「人間を崇拝する宗教団体の?」
「夫は火星人への差別行為反対運動もしていました。でも、その運動も次第に度が過ぎていき、暴力までするような集団になってしまったのです」
北支局から西都市までは少し距離があるため、まだ運転中のホリディのパトカーに通信が入る。フレイムからのようだ。
「ホリディ、キング聞こえるか?」
「あぁ聞いてるよ」
ホリディは運転しながら答える。キングも耳を傾ける。
「まだ運転中なのか」
「西都市に入ったんだが、これがなかなか広くてなぁ。もう近くまで来てるはずなんだけど。何かあった?」
「今、マンティスの奥さんから話を聞いていたんだが、犯人は「O」の信者とみて間違いないかもしれない」
「と言うと?」
「どうやら、サクナは「O」の火星人差別を訴える運動をしていたらしい。奥さんの話によると、その運動は過激化して、暴力沙汰も何度かあったらしい」
「逆恨みで信者に殺された…か」
キングが推理する。
「可能性が高いだけで確信まではいってないが、二人とも気を付けてくれ」
フレイムはそう言い残し、通信を切った。
「俺たち、ジョーカー引いちまったかな…」
ホリディが苦笑いしながら言う。
そうこうしているうちに、「O」と大きく書かれた電光掲示板の後ろに長方形で窓は無く、まるでブロックのように無機質な建物に着いた。
「よう相棒、宗教団体が実は武装集団だった…なんて映画がありそうだよな」
ホリディのいつもの冗談が炸裂する。
「サイエンスゾーンのことか?」
この時代で流行っているSF映画だ。キングが答える。
「あれは、傑作だと思うよ」
ホリディも好きなSF映画のようだ。
「俺は、スターライト怪奇事件簿のほうが好きだ」
スターライト怪奇事件簿とは、探偵アクションドラマであり、サイエンスゾーンと同じ原作者である。
「お前とは一つだけ話が合わないジャンルがある。映画だ!」
「なぜ合わせる必要がある」
「冷たいねぇ」
二人は雑談しつつ、アジトの入り口に着いた。
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