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夜
車の音がいつもよりずいぶん早く聞こえてきた。
ジャケットを羽織り傘を持って出る。
「森田くん」
伊織が車から降りるなり抱きついた。
「ごめんなさい。こんな時間に。」
「道がすいていて走りやすかったですよ」
楽しそうに言って傘を持ってくれる。
雨がひどくなってきた。
「抱きしめて」
ドアを閉めるなり狭い玄関の壁に伊織を押し付けて言う。
伊織は訳も聞かず私のからだに腕を回す。
私は伊織の腕の中、胸にしがみつく。
左の肩が濡れている。私に傘をさしかけたからだ。
伊織が髪を撫でる。愛おし気に頬ずりする。
私のあごを持ち上げキスした、人差し指と親指が冷たかった。
「上がって。」
茶の間の明かりを消し、
寝室へ行き、そのまま二人裸になった。
「あの、ね。深く…ほしいの」
「……でも…」
「うん。いいの。痛くたって……っ」
こんな事をしたって、杉本に身を任せたことが
消えるわけじゃない。
私は、伊織に謝ることもできなければ
許してもらう事さえできないのだ。
今の二人の関係では、罪にさえならないんだから。
伊織はとても勘がいい。そして優しい。
伊織に腰を捉えられたまま、
私は伊織と一緒に、ゆっくり、ゆっくり達していった。
伊織の注ぎこんだものでお腹を満たすと
やっとさわだっていた私の気持ちが
落ち着いてきた。
いつもと同じように、私は伊織の腕を枕に、
後ろから抱いてもらう。
お腹に手を当てていると、その上に伊織の手が載せられる。
「痛むんじゃないですか」
「大丈夫…。いいの。
…あの…ね…私…今日上司と」
「寝ましたよね」
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