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「お疲れ様です。」
「あーこんばんは。やっぱり、きつそうだねぇ」
男の顔に少し明るみがさす。こんな狡猾そうな顔つきだったか。
視線が一瞬、私の胸に動く。
なんでこの男と寝たんだろう。
あれから私と杉本は顔を合わせても、
あんなことがあったとはおくびにも出さないよう
お互い気を付けていたと思う。
女の多い、噂好きの多い職場だ。
慎重にならざるを得なかった。
私が他の事業所の仕事をしたからと言って、おごってもらう事は
なくなっていた。
「申し訳ありません。ご迷惑おかけしています。
来週には出られると思いますので。
施設で何かありましたか?」
「これなんだけどね」
封筒からクリップ止めされた書類を出す。
新設された施設基準についての厚労省からの通達だった。
経営母体がやっている通所介護事業所から回って来た
新しい加算についての通達、
自治体からの、総合事業についての連絡事項もある。
「この基準のことと、デイの加算、ちょっと目を通しておいてもらえれば…」
「わかりました。できるだけ見ておきます。」
「じゃあ僕はこれで。あ、これ、お見舞いです」
と果物の入ったバスケットを渡してくれる。
重い。
「お心遣いありがとうございます。
お忙しい所すみません。皆さんによろしく。お疲れ様でした。」
頭を下げている間に杉本は出て行った。
バスケットを台所に置き、寝室に戻る。
ガウンを脱ぎ、ベッドに腰かける。
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