見舞い

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「帰ったわ」 伊織は脱いだガウンを受け取り、元の場所に掛ける。 横になると、毛布と布団をかけてくれる。 もう背広を着ている。 「俺もこれで。」 上体を起こした私を手で制し 「寝ててください」 と言う。 「もう帰るの?」 「俺が居たら、椎名さん休めないでしょ」 確かにその通りだ。 久しぶりに会って、この気持ちの弾み様では、 眠ることなんてできないだろう。 それに杉本が来た後だ。 そのうち気まずくなるのは目に見えている。 「じゃあキスして」 伊織がかがんで私の肩を抱く。 私も、伊織の首に腕を回す。 ちょっと濃厚なキスになった。 「回復してきたんですね。お大事に」 伊織は苦笑しながら スタンド脇に置いてあった鍵を持って寝室を出て行く。 茶の間の明かりを消し、この間の様に 鍵を新聞受けから落として行った。 私は杉本から渡された書類を少し読んだところで 眠ってしまった。 杉本が、伊織が出てくるのを待っていたことなど全く知らず、 想像さえせずによく眠った。
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