夏がやってきた!

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 千代子堂夏が、胸元をわざとパタパタさせながら仰いでいる。  見えちゃう。そんなことしたら見えちゃうでしょうが! 「いや、見たいんなら見りゃいいじゃん。アホなの?」  背後から声がして、ぞくり、と背中から寒気が這い登る。  俺が振り返ると、そこには千代子堂夏が、チュッパ〇ャップスを咥えながら、細くて白い人差し指を胸元にかけていた。 「!?!?!?!?!?!?!?」 「いやー、中は涼しいねー。でも、居間のドアは閉めないと冷気逃げるよ。エコじゃないなぁ君は」 「あ……な……」 「はい? あー。はいはい。わかったわかった」  千代子堂夏は俺の腕を掴むと、チューブトップの中にそのまま腕を突っ込んで、自身の乳房に押し当てた。 「!?!?!??!!??!?」 「ドアは開けてないけどせっかくだし触らせてあげるって」  俺は、週刊少年漫画を欠かさず読んでいる。だから、お色気ラブコメを読んで、あぁ、こんなラッキースケベあったら絶対俺なら乳房を揉みしだいてやるのに。そんな妄想もした。でもどうだろう。こんな状況になった俺の右手は、そんな俺の本能に反して、彼女の乳房から一瞬にして後退をした。  俺は、千代子堂夏の腕を振り払って、右手自分の胸元に引っ込めてしまったのだ。 (やわ……やわやわやわ……やわい!) 「あはははー、うけるー」  戦闘力が違いすぎる。しょせん童貞がこんな痴女に勝てるはずがないのだ。俺は実力の差をまざまざと見せつけられ……。 「いや、違う。お前誰だ!!」  ハッと我に返る。  しかし、それを意に返さず、千代子堂夏は耳をほじりながら呆れていた。 「だから言ってんじゃん! 千代子堂夏! アンタに青春させるため、未来からやってきたアンドロイドだよ!」 「…………はい?」  アンドロイドは初耳だった。  ということはなんだ。こいつはこんな人間女子の成りをしているにも拘らず、中身は安堂ロ〇ドなのか。 「だからドラ〇もん! わかる? ド〇えもん! あれとおんなじ!」 「同じじゃねぇよ! ドラえ〇ん舐めんな! どっちかって言うと安堂ロ〇ドだろ!」 「うわ、それはやめて。アタシ的にそれはノーサンキュー……」 「あ。うん。ごめん……」  千代子堂夏がすごく嫌そうな顔をしたので、俺は思わず謝ってしまった。  いや、なんでそんな嫌そうなんだよ。いいだろ別に。
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