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俺は健太。25歳。ラーメン屋でアルバイトをして、小説を書く。物書きとして生きていく為に文学賞に応募する日々だ。
いい歳してフリーターじゃないか、あんたの夢を否定しやしないけどね、やるならこの家から出て行くんだね、そう母に言われた俺は二年前から一人暮らしをしている。夏はまだ始まったばかりだけれど、既にゴキブリ4匹を退治した。
さて、肝心の小説だが、今までの7本の作品達が様々な文学賞に突撃した。さながら万歳突撃である。そう、全て散ってしまったのだ。
ファンタジー、ライトノベル、ミステリー。どれもこれも最終選考に届きもしない。出版業界の犬、下読みの連中が俺の作品の魅力を分かるわけがない。どうせ奴らは殆ど読みもせず、駄文だなんだと弾いたのだろう。
さあ、今から書き始める次の作品はとっておきのネタさ。純文学よろしく、半自伝のような説得力のある文章を作り上げてやろうと思っている。卓越した想像力も大切だが、リアリティのある文章ってやつは力を持っているものだ。小説家を目指す若者の葛藤と、その達成と、そしてどんでん返しの構成。緻密でリアリティがあって、シリアスな心理描写、読者を惹きつける文体でありながら、ドラマティック。センスのない下読みの連中にだってこの魅力の半分の半分くらいは理解できるだろう。まあ、現実の俺はまだ小説家になれてはいないのだけれど、どうせ未来は小説家なのだから、自伝みたいなものさ。
そうだな、最初の一文は自己紹介。こんな感じに始めようか。
俺は健太。
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