動き出した物語

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「やっぱり。」 私の1LDKと広くも狭くもない城の扉を開けて、入ったユウの第一声。 「オネーサンピンクとか淡い色好きだよね。」 やっぱりと言われて、見透かされたみたいでムカつく。 「なに見てそう思ったの。」 確かに淡い色もピンクも好きだ。 でも、モノトーンとか好きそう、という周りの人のご希望通りレイアウトはいたってシンプル。 家具も黒白で揃えている。 「ピアス。」 ユウが私の腰まで伸ばした髪を遊ばせながら耳に掛けて覗くリングのそれは 「ピンクゴールドだったし。」 手を払いのけながら耳に触れてみた。 そういえばピンクゴールドだった気がする。 「部屋もほら、寝室も。シンプルなのは間違いないって思ってたけど、やっぱり可愛いじゃん。」 そう言ってユウは家主を差し置いて先に部屋に入り、寝室にあるガラステーブルの中の作り物の花達を覗く。 「勝手に入らないで。」 誤魔化した。 あの花の飾りは私が作った物だ。 淡いピンクや赤の紙を使って、花弁1枚から昔好き勝手に作った物。 いわばガード無しの私。
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