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「香りのボトルとか、鍵のケースとか、キッチンの布巾とか。ところどころ線とかピンク多いよね。」
「悪かったわね。」
ここまでだとは。
初めて声かけられた日から、人の事よく見てるとは思ってたけど、初めてやっぱりって言われた。
作り上げた虚像の中、私自身を覗かれているみたい。
居心地悪い。
「アンタはソファね。」
寝室の扉を閉めながら立ち入り禁止を訴える。
「はーい。あ、オネーサン。」
「お邪魔します。」
年相応の幼い笑顔でも、色気の篭った妖艶な笑みでも無く、悪巧みしてますとでも書いてある顔で、ニヤッと笑った。
「大人しく寝な。」
1人寝室に入った。
ガキがソファで大人しくしている気配をしばらく感じて、部屋着に着替える。
黒のワンピースにカーディガンを羽織ったところで、
「オネーサン!」
お呼びがかかった。
「なに?」
寝室の扉を少し開けて、ソファでくつろぐガキを確認。
なんでアンタはそんなラフな格好なの。
ここ、私の家なんだけど。
「お腹すいた。ごはん。」
はい?
「昨日からなにも食べてないからさ。」
明るい照明から見るガキは地下で見たよりガキらしい。
「はぁー。」
ため息も出るよそりゃ。
「下のコンビニで買ってきなよ。」
「オネーサン作ってよ。」
「はっ?!」
図々しい。
「食べたい。オネーサンの手作り。」
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