動き出した物語

3/7
前へ
/116ページ
次へ
「香りのボトルとか、鍵のケースとか、キッチンの布巾とか。ところどころ線とかピンク多いよね。」 「悪かったわね。」 ここまでだとは。 初めて声かけられた日から、人の事よく見てるとは思ってたけど、初めてやっぱりって言われた。 作り上げた虚像の中、私自身を覗かれているみたい。 居心地悪い。 「アンタはソファね。」 寝室の扉を閉めながら立ち入り禁止を訴える。 「はーい。あ、オネーサン。」 「お邪魔します。」 年相応の幼い笑顔でも、色気の篭った妖艶な笑みでも無く、悪巧みしてますとでも書いてある顔で、ニヤッと笑った。 「大人しく寝な。」 1人寝室に入った。 ガキがソファで大人しくしている気配をしばらく感じて、部屋着に着替える。 黒のワンピースにカーディガンを羽織ったところで、 「オネーサン!」 お呼びがかかった。 「なに?」 寝室の扉を少し開けて、ソファでくつろぐガキを確認。 なんでアンタはそんなラフな格好なの。 ここ、私の家なんだけど。 「お腹すいた。ごはん。」 はい? 「昨日からなにも食べてないからさ。」 明るい照明から見るガキは地下で見たよりガキらしい。 「はぁー。」 ため息も出るよそりゃ。 「下のコンビニで買ってきなよ。」 「オネーサン作ってよ。」 「はっ?!」 図々しい。 「食べたい。オネーサンの手作り。」
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加