動き出した物語

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早く寝たい。 「オネーサン」 「なに。」 「おやすみ。」 そう言って照明の消えたダイニングのソファで目を閉じるガキ。 「ホントに・・・」 「うわっ!」 「おやすみ。」 ソファにクッションと毛布をクローゼットから引き出して投げた。 ガキの驚いた声はちょっと意外なくらい高い。 私、何してんだろ。 「あぁーもう!!」 ぐしゃぐしゃと髪を掻きむしってベッドに入る。 疲れたせいか、その夜はぐっすり眠れた事だけは良い事だったと思う。 あ、いや。 疲れたのはガキのせいじゃん。 「・・やくびょうガキ・・・」 本人には届かない寝言だった。 朝、いつも通り起きて戦闘モードに移行。 私の支度が終わってもまだ起きないガキを叩き起こして引っ張り出すか悩んだ挙句、結局1人で家を出た。 もう来ないだろう。こんな所に居る理由も無いし、昨日は寝床が見つからなかっただけ。 体の関係があった訳でもない。 止まり木に固執するタイプにも見えないし。 そう思いながら駅までの道を歩く。 そしてあいも変わらず使えない後輩にやきもきしながら1日の仕事が終わった。
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