動き出した物語

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「なんでまだ居るの。」 「あ、オネーサンおかえり。」 玄関を開けたそこは、ある意味別世界。 「き、汚い!!!」 脱ぎ散らかった服、何か作ろうとしたであろうキッチン(残骸を見る限り失敗してる)、箱から外れたお菓子や紙くずのゴミ、カーペットの上のカス。 最悪。 掃除掃除掃除掃除掃除掃除。 窓を全開にして、全て元の状態に戻す。 「オネーサン?」 「掃除機に吸われたくなかったらどいて。」 これだけ動いている家主を見てるくせにソファでゴロゴロするガキを掃除機を使って床に落とす。 あ、ソファにもお菓子のクズ挟まってるじゃん。 「アンタは風呂!!」 浴室に突っ込み、1時間かけて、やっと私の部屋に戻した。 謎の満足感。 「終わった?」 部屋の扉の前から髪の濡れたガキが近づいてくる。 これはまた色気すごいな、ガキのくせに。 「なんでまだ居るの。」 「いつ出て行くかは言ってないでしょ。」 「まだ居るつもりなの!?」 「もちろん。」 シレッと言うな。というか。 「なんで。」 なんで私なの。 ここじゃない場所なんていくらでもあるじゃん。 これだけお菓子や無駄な漫画とか買えるなら、お金がない訳ではなさそうだし。 連絡手段もいくらでもある。 それより早く家帰れよ。 なんで。 「ご飯が、温かかったから。」 定位置、みたいに当たり前にソファに座ってニヤけながらまだ出ていかないよ、と言うガキが 少しだけ、ほんの少しだけ。 寂しそうに見えた。
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