夏が来た

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病院勤務で、よくあるあるは、出勤してきた時雨で、帰ろうとしたら晴れてた。 当たり前すぎるかも知れないが病院勤務は時間や天気、果ては季節感まで麻痺させてしまう。 ◇◇◇ 病院職員関係者出入り口で、同居人の波田壮一郎(はだそういちろう)に出会した。 「…よお、安芸(あき)センセ、お帰りですか?」 白々しいがルームシェアしているので、帰る場所は一緒だ。 「一緒に帰るか、バス無いだろ?いくら駅から一本とは言え」 「助かります~」 この北桜病院は住宅地から少し離れた小高い山の上に新しく出来た病院で、日中は駅から一定間隔でバスがやって来るので便利だ。 波田は普段バスを使っている。 昼間勤務の事務スタッフとかではないので、本来は自家用車勤務が一番いい。 入口から駐車場に向かう途中波田は周囲を見て、 「ねぇ、桜が終わったと思ったらバラじゃないかな?ここけっこう手がこんでるよね」 「こんな、中途半端な場所の花より屋上庭園の方が凄いだろ」 ピピっと電子音が鳴りガチャリとドアが開く。 車内に乗り込み。 「飯はどうする?」 「ファミレス?コンビニ?」 「なんととも言えない返事だなぁ」 「何か優しいモノが食べたいです。あと仕事中に食べるカップラーメンとかブロック食とか買いたいです」 「スーパーだな、院内の売店とか注文弁当とかは?」 「聞くのもヤボなんじゃないの?安芸はスーパーじゃ買わない?」 「…」 ◇◇◇ 波田とは医大に通っていた頃からのルームメイトで、波田が見た目と性格の随分の違いと趣味の理解がなかなか得られず探していた時見付けたのが俺だった。 波田は銀縁のメガネが似合う美人の類いで、周囲に"クールビューティー波田"と一線を引かれがちで、プラスして萌系キャラアニメやゲームが好きとオタク要素の備わった少し残念なイケメンだった。 新設される、北桜病院勤務に決まってもルームシェアが続いたのは、俺が波田の趣味にどうこう言わない。そして俺も同じ職種で生活習慣やどうしてもそうなってしまうとか理解がある波田が同居人として理想だと思ったからだ。 …まぁ、完全にそれだけではないが。 ◇◇◇ バラが咲きそう、バラが咲いていた。バラは初夏の花だ、夏が来る。 夏と言えばゴミの後始末を手早く一手間かけて嫌な思いを避けたい。そんな季節だ。
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