†7月19日†

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通知表を待ってる時間がもどかしい。 夏の日差しが窓に降り注いで、なんだか教室中がキラキラしてる気がした。 匂いだって、昨日とは違う。みんなの浮足立った声が、海のさざ波みたいに、押しては引いている。 ちゃんと席についている人なんか誰もいなくて、思い思いの席で明日からの予定を話し合っていた。 安藤センセイは、大体のことを名前順でやるから、「ワタナベ」のあたしはいつも最後から二番目。 通知表もらった人から帰っていいと言われてるけど、あれだけ待ち遠しかった夏休みなのに、まだ学校での時間を惜しむようにみんな残っていて、にぎやかだ。 「ほたるう!」 すずが通知表を片手にあたしのところにやってきた。 いつもよりフチの大きいカラコンと濃いめのメイクで、気合が入っている。 「どしたの?」 「あたし勉強まじ向いてないわ。見てよこのきれいな・・・『1』の揃いっぷり。」  空いていた前の席に座ると、ペッとあたしの机に通知表を広げた。見事なまでの・・・オール「1」。 「これは確かにすごいな。あれ、ノート貸さなかったっけ?」 「コピーしたやつバッグごとクラブで盗まれちゃってー」 すずは舌をペロッと出した。 「自業自得じゃん」 「そんなことゆわないでよう」 そっけなく返すと、すずが机越しに抱き着いてきた。意外にも涼しげなシトラスの香りと一緒に、耳元のピアスが揺れて鼻をくすぐった。 「あれ、また穴増やした?」  すずは耳に触りながら、大げさに困った顔をした。 「軟骨に空けた、超いたかった!見て見て、赤くなってない?」 「見たないわ。たくアホなんだから」 そう言うと、すずは嬉しそうな顔をした。 勉強そっちのけで遊びたいざかりのすずはいわゆるギャルで、それなのに同じバレー部に在籍してコテコテの部活少女コンビだった時代から、変わらずすごく懐いてくる。 なんでも徹底した性格で、去年の夏、ギャル道に目覚めると、速攻で退部届を出して顧問を泣かせた。 週六練習もいとわないタフなプレイヤーが、今はツケ爪を気にしながら、バッサバサのまつ毛を直している。 ちなみにあたしは昔から、がっつり練習から距離をおく、身長が高いばっかりのわりとゆるい部員だ。
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