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「NASAが本日の記者会見にて、発生原因不明の惑星が火星付近で突如発生し、地球に向かって大移動を開始し始めたと発表しました。惑星は今この瞬間もじわじわと地球に近づいており、このままいくと、地球と衝突し、その衝撃波で地球は滅亡するとのことです。惑星と地球が衝突するのは約三週間後と予想されており……」  その日の夜ご飯は、インターハイ優勝記念で、あたしが大好きなオムライスだった。  ニュースをテレビで聞いて、あたしは思わずオムライスを口に運ぶ手がとまった。隣に座って居る弟が「うわ、やべーじゃん!」と声を上げ、そこから弟とお父さんとお母さんがわーわーと話し始めた。  あたしはというと、地球が滅亡するということが信じられなくて、じっとテレビを見つめていた。 「聖奈は、夢だったインターハイも優勝出来たし、地球が滅亡しても、悔いはないんじゃない?」  お母さんにそう話をかけられて、あたしはハッと我に返る。  インターハイでの優勝は、あたしが陸上を始めた小学生の頃からの一番の夢で、それを実現するために今まで無我夢中で走り続けてきた。そして、今日、高校二年の夏、その夢はついに叶った。  今まで、そのためだけに生きてきたようなものだから、表彰状を貰った瞬間は凄く嬉しかったけど、燃え尽きた気分になってしまった。ずっと追いかけ続けて来た夢を実現してしまった今、これから何をして生きていけば良いのかわからない。 「そう、かも……」  もちろん、家族や友達ともう一緒にいられないって考えると凄く悲しい。だけど、インターハイを制覇してしまった今、人生でやり残したことはもうない気がする。  だから、なんというか……、今地球が滅亡しても、まあいいかなって思ってしまう。 「ホント信じられません……。地球滅亡の日まで、彼氏といっぱい過ごしたいです……」  テレビでは、そのニュースを知ったお姉さんがインタビューを受けている映像が流れている。お姉さんが「凄く大好きで、これからいっぱい思い出作りたかったのに……」と言いながら、彼氏とのツーショットの写真を見せてくれている。あたしはそれぼんやりとみつめていた。けど。 (ん……? ちょっと待って……) (あたし、今まで一度も彼氏いたことなくない?!!!!) (え、あたし、彼氏が一度も出来ないまま死んでいくの……?!!!!!!!)
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