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あえて彼から離れたところに立つ。女性たちの争奪戦に巻き込まれたくないからだ。
(今日もイケメンをめぐる場所取り合戦が繰り広げられる)
ミニスカートのオフィスレディー。ミニスカートの女子高生。赤く染めた髪を四方八方に遊ばせている学生さんも彼の近くに陣取るため、オジサンやら外国人やらを押しのけて息のかかる距離に突き進んでいく。
(こんなんで彼女らにロマンス生まれるのかなぁ)
彼は女子高生二人組が座っている前に立った。それまで爆笑していた二人組が即座に押し黙り、上目遣いに彼をロックオン。
そんな女子高生らを上から目線のオフィスレディー。うまいこと彼の真横をゲットできたようだ。
それもそうだが彼の反対隣におじいさんが立っているんだけど……。女子高生たちおじいさんは視界に入ってないのか。ここでおじいさんに席ゆずったら彼に顔覚えてもらえるかもしれないのに。ロマンスのきっかけになるのに、なんでゆずらないかな。
(人はこうやってチャンスというものを見逃していくんだな)
なんて思っているうちに新大久保を発車。あと一駅で新宿だ。
私の視線は頭の葉っぱ。どんなに揺れようと、急停車しようと、糊でもついているかのように剥がれない。
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