葉っぱ

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 油断した。葉っぱを奪いとられた。いや、もともと彼のだ。しかしなんで怒りの感情むき出しではたかれるように奪い返されなきゃならない。取ってくれてありがとう、お礼にランチでもおごります。じゃないのか。オバサンズラブ開幕ではないのか?  あまりのことに驚きすぎて彼がそのまま走り去ったのも気付かず。会社の派遣仲間に声をかけられなかったら遅刻するところだった。  翌日。いつもと変わらない朝の通勤。AM8時前の私鉄に乗り込み池袋に向かう。  あれは若くて綺麗な子を狙っての葉っぱだったんだ。靴の紐もわざとほどいた。しゃがんだのも意図的。葉っぱを取れる高さにして「さぁ、どの子猫ちゃんが若葉を摘んでくれるのかな」と仕掛けていたに違いない。計算狂って私が取ってしまったから壮絶なショックを受けた。なんでお前なんだ、余計なことしやがって、狙っていた可愛い子がいたのに。きっかけつくろうと頑張ったのに、なんでお前が引っかかるんだよ! ヘドバンヘドバン! (平成に生まれてさえいればこんなことには)  己の出生を呪う。  電車はいつも通り池袋に到着した。 (彼がいても離れて歩こう)  全く認めたくないが、オバサンらしくしおらしく。  改札へ向かう。彼はいないようだ。時間をずらしたのかもしれない。 (この時間にイケメン君を楽しみにしていた女性たちに悪い事したなぁ)  でも私だって悪気があったわけじゃない。それどころか親切心だ。 「邪魔しやがって」 「ギャッ!」     
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