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これを策定せずに動かすことは、現場ではよくあることかもしれないが、戦場に陣形なしで飛び込むことに等しい。それを教えてくれた上司は、スタイルがよく、髪がきれいで、恋人がいないとうわさのA先輩だった。ぼくはA先輩のことだけは尊敬していたから、彼女から受けた教育や、与えられた副読本はきちんと消化して自分のものにしていた。ぼくは天才ではなかったし、優秀でもなかったが、ハマれば戦えるタイプの足軽だったのである。
「辞表を出すなんて聞いてないわよ。撤回しなさい」
A先輩からのメッセージが届き続けている。
「あなた見込みあるんだから、もったいないわよ」
ぼくはモバイルを、ふかふかのベッドの上へ放り投げた。
ノートパソコンで、プロジェクト・マネジメントツールをあらためて立ち上げた。コンセプトは決まっていた。「人生からの亡命」、これである。ただし、少々ポエムだから、もう少しあたりまえの言葉に落とし込むことをしないと、ポエムのまわりをぐるぐると回るアカウントになってしまう。そこでぼくは、A先輩に教わった困ったときの一手を打つことにした。
「前例を見つけよ」
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