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可奈子は動揺したわたしに気づくこともなく、こう言った。
「わたしね、この手紙読んでフラれたのは確かにショックだったけど、一番心配だったのは梨菜が佑太くんに取られちゃうかもって、思ったことなの。だから、よかった。梨菜も佑太くんも同時に失っちゃったら可奈子の高校生活真っ暗じゃない」
可奈子は今日失恋したばかりなのが嘘のように、安心した様子でケラケラと笑った。
「可奈子……」
可奈子、わたしと同じこと考えてたんだ。
そうだね、佑太くんと付き合ってしまったら、わたしも可奈子を失ってしまうんだ。
ーーこれでいい。
可奈子は、可奈子は大切な友達だ。
佑太くんとの恋は成就しなかったけれど、片思いじゃなくて両想いだったって分かっただけでも嬉しい。
だから、だからこれで良かった。
いつか、わたしたちがうーんと年をとって昔話をはじめたら、可奈子に本当のことを伝えよう。
わたし本当は、佑太くんのことがずっと好きだったんだよって。
可奈子にバレないように後ろを向いて、あわてて涙をふいた。
もしかしたら佑太くんにも、いつか伝えられる日が来るかも知れない。
わたし、あなたのことがずっと好きでしたって。
きっと、いつか、、
いつか、きっと言える。
(完)
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