**

7/9
前へ
/14ページ
次へ
「わたしは靡かない。どんなに顔が良くても、勉強できても、わたしにとっては同級生。ただのクラスメイトよ」  意地悪だったかもしれない。でも、わたしは思ったんだ。  そんなふうに思うのは、ただ珍しかっただけじゃないの? 樹くんに興味を持たないわたしが、不思議で仕方ないだけ。  恋とは、違う。 「七海じゃないと意味がない」  樹くんはなぜ、わたしにそんなことを言うの?  他に女なんて、たくさんいるのに。好きだって言ってくれる人は探さなくたっている。  どうして、そんなに頬を染めているんだろう。わたしには、わからない。 「好きなんだよ、七海が!」  真っ直ぐに気持ちをぶつけられて、靡かないはずがない。  わたしは、多分好きなんだ。好きな気持ちに正直になれずに、避けていた。ずっと……。  忘れ物なんてしないように、慎重になったのは樹くんのせいだ。  でもやっぱり自信がない。この気持ちは恋愛じゃないかもしれない。ただ、びっくりしているだけかも。 「そんなにわたしが欲しいなら、靡かせてみせればいい」  そんな言葉がわたしの口をついて出た。 「わかった」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加