**

8/9
前へ
/14ページ
次へ
 そう言うと、右手はわたしの手を絡めとるように握る。左手は黒板に押し付けたまま。  近づいてくる彼に、鼓動がおかしくなった。ふわりと、彼の前髪が触れる。  どうしようと思っていると、頬にキスされていた。優しくて、でも脅えるように震えていて。  樹くんの温もりがわたしを包んで離さない。  唇が離れると、 「絶対に好きだって言わせてみせる」 「わたしは手強いわよ」  そんな会話を交わして笑い合う。  学校一のイケメン王子が、わたしに夢中。  滅多にない経験。少しだけ焦らしたくなる。  まるで立場が違う今という時間。少しだけ快感。 「七海が好きだ」  わたしも、樹くんが好き。  でも、まだ教えてあげない。もっと、好きになって欲しいから。夢中になって欲しいから。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加