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 樹くんと一緒のクラスになったのはたまたまで、それでも隣のクラスの友達には羨ましいと言われた。  確かに恰好いいし、彼みたいな人が彼氏なら自慢だろうけど。  好きだという感情はなかった。芸能人でも見ているかのような冷めた感覚かな。  忘れ物をしたお陰で、お疲れ様な彼を目撃してしまった。  運がいいんだか、悪いんだかわからない。変に緊張する。  意を決して教室に入ると、樹くんの目線が動いた気がした。気にしないようにして教科書を探す。  目当てのものを見つけて教室を出ようとしたら、 「待ってよ」  呼び止められた。 「なに?」  クラスメイト。だから特別な感情はない。当たり前。でも突き放すように冷たく返事をすると、樹くんは驚いたようだった。 「君、違うね」 「なにが?」 「他の奴らと違って、ちやほやしない。気持ち悪い感情ぶつけてこない」 「贅沢ね」
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