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 ◇  夏休みに入ると部活だったり、夏期講習だったり、色々と学校に通う理由がある。  学生って意外と多忙だ。夏休みなんて名前だけ。本当にイラつく。  夏休み中ってことで荷物が少ないせいか、忘れ物の数が減った。  減ったというよりも面倒になっただけ。わざわざ取りに戻るほど大事な物はなかったから。  ノートくらい忘れてもそのうち学校に行くし、教科書を忘れても家で勉強する気はない。  教室に戻ることもなくなって、同じ夏期講習を受けていても、放課後限定の友達とも話さなくなった。  でも気にならなかった。  だって学校の王子様と会話出来るなんて、有り得ないこと。平凡女子のわたしには非日常だったから。  わたしの日常に戻っただけのこと。  八月最初の週。夏期講習と部活で疲れ果てていたその日。 「マズイ」  駅。  カバンに入れていたはずのスマホがないことに気づいた。なくしたらシャレにならない。  暑いから早く帰ってエアコンの中でアイス食べたかったのに。わたしの予定が全部台無し! 「先に帰ってて!」  友達に先に帰るように言って走る。
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