7/9
前へ
/9ページ
次へ
 大学帰りに、偶然、加藤先生と再会した。 「先生!」 「よう、飴宮。大学は楽しいか? たまには高校に遊びにこいよ」 「そうですね。今度、行きます」 「あー、その前に、聞きたいことがあった」 「なんでしょうか?」 「ラブレターをくれたのは、飴宮だろ?」 「え?」  ばれていたことに焦った。  そんな私の様子を見て、加藤先生は確信した。 「やっぱり、そうだったんだね」 「どうして分かったんですか?」 「手紙から飴宮と同じ匂いがしたんだよ」 「匂い?」 「ラベンダーの香り。あれって、部屋に散布する消臭剤だろ?」 「……」  私の部屋では、ラベンダーの香りの消臭剤をたまに部屋に撒いていた。 「飴宮からも、同じラベンダーの香りがした。それで分かった」 「制服に移ったんでしょうか。それと、便箋にも」 「そうだろうね。界面活性剤を使用したヒドロキシ酸系消臭剤は、匂いが部屋中に移る。しかも、貼りついてなかなか消えない」 「……」  自分で自分の匂いは分からない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加