9/9
前へ
/9ページ
次へ
「ラブレターをたくさんくれてありがとう。結構、楽しみにしていたよ」 「いえ……」  そんなことかと、ちょっと落ち込む。 「君も卒業したことだし、これから僕と真剣に付き合ってもらえないか?」 「え?」  先生の言葉に、飛び上がらんばかりに驚いた。 「私でいいんですか?」 「ああ」  自分が選ばれたことを不思議に思った。 「他にも告白してきた子がいましたよね? 私なんかより、もっと積極的に」 「あれは、自分のことしか考えていない子が多かったな。それに、君のことを知れば知るほど好きになってしまって、他は目に入らなかったよ。僕の大好きな化学を、一番好きでいてくれたのは君だった」  私は、涙ぐんだ。 「よろしくお願いします。先生のこと、今も大好きです」 「もう、先生って呼ばなくていいから」 「はい……」  加藤先生の爽やかな笑顔が私に向けられている。  長かった片思いが、終わりを告げた瞬間。  お互いに『言えなかった気持ち』  今、ようやく伝えあって、AとKが共有結合で結びついた。 「家まで送ろうか」 「はい」  長い影が寄り添う帰り道。  卒業まで待ってくれた加藤先生は、思った通りの素敵な人でした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加