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《飛行機の乗り心地はどうだった?》
「乗り心地? 分かりません。寝心地なら良かったと思います」
《貴様らしい答えであるな》
「で、協力者の居場所なんですが」
袖をまくったパーカーのポケットからメモ紙を取り出すヒューガ。
JVが手書きしたらしい二桁の数字が規則正しく整列している。
「この数字は座標ですか?」
《手の込んだ暗号だろう?》
「確かに。私でギリギリ解けたくらいですから、ハーバードの教授クラスの暗号でしょうね」
《どうやら小学生の謎々並であったようであるな》
「何か言いましたか?」
《その通りだ、と言ったつもりであるが》
「そうでしたか。分かりました、では住所は私のほうでなんとか割り出しておきます。タクシー代は経費おりますか?」
《我輩も鬼ではない》
「さすがです」
《選ばせてやるである。鉄道か、自腹のタクシーか》
「……鉄道で向かいます」
《よろしい。では我輩は仕事に戻る》
「仕事をしているのは私も同じですがね」
プツッ…
JVの通信はそこで切れた。
相変わらず抑揚のない事務的な口調だったが、それはつまりことが順調に運んでいるという事の現れだろう。
炎天下の中、ヒューガのハイヒールブーツは駅の入り口へと踵を翻した。
背の高い金髪の女の乗車を期待していたタクシードライバーは、不機嫌そうにコーヒー牛乳のパックを開けた。
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