Chapter.1 ~来日~

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《飛行機の乗り心地はどうだった?》 「乗り心地? 分かりません。寝心地なら良かったと思います」 《貴様らしい答えであるな》 「で、協力者の居場所なんですが」 袖をまくったパーカーのポケットからメモ紙を取り出すヒューガ。 JVが手書きしたらしい二桁の数字が規則正しく整列している。 「この数字は座標ですか?」 《手の込んだ暗号だろう?》 「確かに。私でギリギリ解けたくらいですから、ハーバードの教授クラスの暗号でしょうね」 《どうやら小学生の謎々並であったようであるな》 「何か言いましたか?」 《その通りだ、と言ったつもりであるが》 「そうでしたか。分かりました、では住所は私のほうでなんとか割り出しておきます。タクシー代は経費おりますか?」 《我輩も鬼ではない》 「さすがです」 《選ばせてやるである。鉄道か、自腹のタクシーか》 「……鉄道で向かいます」 《よろしい。では我輩は仕事に戻る》 「仕事をしているのは私も同じですがね」   プツッ… JVの通信はそこで切れた。 相変わらず抑揚のない事務的な口調だったが、それはつまりことが順調に運んでいるという事の現れだろう。 炎天下の中、ヒューガのハイヒールブーツは駅の入り口へと踵を翻した。 背の高い金髪の女の乗車を期待していたタクシードライバーは、不機嫌そうにコーヒー牛乳のパックを開けた。  
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