閉幕

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閉幕

 登校した実梨は二年生のクラス分けの張り出しを見る為に、親友の珠希と掲示板へと足を運んだ。彼女の苗字は去年までは、「ア行」だった。いつもなら恐ろしく速く見つかってしまうが、今日は少しだけ時間が掛かった。  麻生新、大丸蒼、押立鉄、押立梨花、柿生充玖、上谷戸樹乃実。一年の時と殆ど変わらない顔ぶれなのに、稲田筒満の名前が無いのを見て珠希が少し困惑の色を見せた。それを見た実梨が「それより、また同じクラスだね。よろしく」と珠希に微笑みかけた。  教室に入ると、黒板に席順の紙が貼られていた。右上から大丸蒼、その隣が押立鉄。去年と同じなのは、大丸蒼の後ろが押立梨花。自分の名前を探すと、やっぱり一番後ろ、窓際の席だった。実梨と珠希は、貼られた席順の通りに腰かける。大丸蒼と上谷戸樹乃実の困惑の瞳が、実梨へと向けられる。  しばらくすると、担任の女性がやってきて名を告げた。今年もよろしくね。と言ったのは、去年と同じ担任の先生だった。  それでは新しいクラスだし、改めて自己紹介をしましょう。と先生が言った。去年と同じで出席番号二番が、二人の友達の大丸蒼だった。二年から部活を始めたので、早く上手くなれるように頑張るとの事だった。押立くんの為に、でしょう。と思うと、実梨は少し微笑んでしまう。  その後もクラスメイトの自己紹介が続き、やがて珠希も自己紹介を終えた。マ行が終わり、ヤ行が終わると、実梨の番がやってきた。不安と期待を胸に、彼女は真っ直ぐと立ち上がる。 「若葉田実梨です。親が再婚して、苗字が変わりました。……けど、また仲良くしてください」  皆の驚愕の目を一斉に受けても、実梨は何食わぬ顔で席に腰かけた。
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