14.形見

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 オレの大好きな家族の話をしよう。対照的な二人の妹のことだ。  稲瀬みのりは活発な女の子で、星座の知識はオレの四十二一九五倍はある。よく出来た義妹だけど、小さくて華奢で生意気な奴というのが我が第一印象だ。だけど、生意気なのではなく、彼女は人一倍努力家なだけの女の子だ。自分の理想の為に頑張れるし、どうにかしようと躍起になる。あまり人を頼らないのは玉に瑕だけど、オレも義妹のことは言えないのだ。  その一方、南タマキはおとなしい女の子だった。男性が苦手なのだろう、入部から一度もオレと目を合わせてくれなかった。だけど、きっと彼女は人懐っこい性格だ。基本的に引っ込み思案だから目立たないけど、一度心を許した相手には大きな信頼を寄せてくれる。不器用であまり積極的には動けないけど、誰よりも穏やかな心を持った女の子だ。  今までのオレの日常は、まるで東から西に目掛ける光のように駆け抜ける毎日だった。代り映えもしないが、刺激が無いわけでもない。それでも回り続ける日々の、季節が移るタイミングで何かが変わっていくような気がした。  これからの自分に言伝が出来るのなら、十六歳の四月でもなく五月でもなく、これからお前の人生はずっと輝き続けるのだと断言出来る。  オレには出来た義妹と従妹が一緒に居てくれるのだから。
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