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所轄署の死体安置室が主な俺が、近頃気になる噂を耳にした。
組対。
過去、マル暴やら、四課やら呼ばれていた。組織犯罪対策部に、機動隊から引き抜いた。ベイビーフェイスの新人の事だった。
◇◇◇
「達真さーん?」
自分の職場に戻ろうとしたら組対の刑事、山岸達真(やまぎしたつま)が人を連れて立っていた。
まるで子犬のように山岸に噛み付かんばかりに吠えたてている。
「達真さん、どうしたの?そのカワイコちゃんは?」
すると青年は溝口を睨み付けた。
「や、悪いね。なかなか躾出来てなくて」
山岸は青年の頭をぐしゃぐしゃにした。
「こいつは、矢島北斗(やじまほくと)機動隊から組対に移ったばかりでな」
ーーあぁ、この子が噂のコか、なかなか小柄で線も細い、よく機動隊でもったなぁ。
「あれ?でも今組対絡みの遺体なんて来てないよ?」
「あー…女子高生なんだ普通の、飛び降り自殺扱いなんだけど、身元が組対絡みで…一応確認したいんだけど」
「聞くけど矢島君いくつ?検視官の資格でも持ってる?」
怪訝な顔をして矢島は山岸を見やる。
「だから、さっきから言っただろ?死体見たことあっても飛び降り自殺の死体はまた来るもんがあるから無理すんなって話」
「先輩、平気ですって!」
「これか…達真さん、洗面器かバケツ持たせて下さいよ。汚されるのは勘弁だ」
「悪いね」
ーー勢いの良かった新人は、お約束とばかりにバケツに戻してトイレに駆け込む結果となった。
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