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それは今ある者として見過ごすことはできなかった。
覚悟はすでにできている。
だが、我が子や自分たちを支持してくれる者たちのことを思うと、迷いはないが憂いはあるのは事実だ。
ゆるい風とともに、金髪に碧眼の瞳の男が新たに部屋に入ってきた。
誰が見ても高貴な身分だとわかる服装や仕草に、はっと目をひくほどの青の双眸を持つ美形。だがその表情はどこか暗く、静かに黒髪の男の傍に立つと硬い声で告げた。
「もう時間はありません」
「そうか……。君たちには心苦しい時間を強いて悪いと思っているが、もう少し耐えて欲しい。願わくは子どもたちの時代には平穏が訪れてくれればいいが」
「あなたが動かなくても、すでに限界が来ていた。それが早いか遅いかだけの違いです」
確固たる口調で告げる友人の言葉に、目を伏せただけで黒髪の男は続ける言葉を持たなかった。何を言ってもどれだけ言葉を重ねても、どこか上滑りするようだった。
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