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その後ろには彼女を守るように立つ、暗褐色の長い髪に紺碧の瞳のスレンダーな美女。
その佇まいは気品に満ちた貴族令嬢を思わせる。
だが、ドレス姿が似合いそうな彼女は、パンツスーツ姿といった、どこか秘書のような従順さと鋭利さを兼ね揃えていた。
思い思いに窓から自分たちの子どもを眺めていたが、目の前にある幸せな存在と、迫る現実の違いに、大人たちは心から安らぐことができなかった。
ここ数十年続いた平穏はそろそろ終わりを告げようとしていた。
何事にも終わりがくることはわかっている。一定で何も変わらないものはない。
誰かが平和で過ごしやすいと感じている時、どこかで居心地が悪いと感じている者もあるということなのだ。
全ての者が幸せに、とは夢の世界である。なぜなら、幸せの定義はそれぞれであるからだ。
だが、ある一定のルールと認識はある。それが崩れてしまうことは、世界のバランスが崩れることと同義である。
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