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次に目が覚めたのは、九時ではなかった。起こされたのだ、強制的に。
「おはよう! つぐ兄ちゃん!」
「……お前、何で?」
僕は時計を確認した。時刻はまだ八時半。三十分も予定を崩されてしまった。この、いとこに。
「電車さ、一本早いのに乗れたんだ」
「一本早いのって……何時のに乗ったんだよ」
「六時!」
「ろくじ」
僕は眩暈のようなものを覚えた。こいつ、始発で来ようとしてたのか。
「早く起きろって! それで、勉強教えて!」
「待って、話が見えない。お前は今日、どうしてここに来たんだ」
「夏祭りに」
「なら勉強は関係ないだろ」
「関係ある。俺、受験生だし」
なら、祭りになんか来ないで家で勉強してろよ、と思った。僕はまだ眠い頭で、必死に今の状況を把握しようとした。
「まず、それを返せ」
僕ははぎ取られたタオルケットを指差して言った。冷房が効きすぎて寒い。
「駄目だ。それにおばさんがそろそろ起きろって言ってたぜ」
「……はぁ」
僕は溜息を吐いた。
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