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(まあ、こいつが一人前に女を抱けるのかは知らねえけど。自信がないと言うのなら、あさひの前にあたしが相手をしてやってもいいし)
そのようなことを冷静に考えていたせいで、榛名の丸い目が昏く翳っていたことに、赤城は気づけなかった。
「水揚の相手など、本来ならありがたい話かもしれないが……赤城さんが、俺にそれを言うのか?」
「え?」
「俺の気持ちは、赤城さんが一番わかっていると思っていた」
ようやく榛名の変化に気づいた赤城は、言葉もなく目を見張る。交わった視線は、やけに熱い。
慌てた赤城が視線を逸らすより先に、腕をとられていた。
「放してくださんし!」
「俺に本音を隠す言葉を使わないでくれ」
「だからって……榛名様は、あたしにとって数いるお客さんの中の一人だ!」
酷い言葉を突き立てた自覚はあった。わざと、そうした。
合わせる顔もなく俯く赤城の手を、榛名は依然として放さない。手首を掴む熱が熱すぎて、今にも焼き切れてしまいそうだ。
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