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僕の視線を感じたのか、君はこちらを振り向いた。目が合う。唇の端に笑みが自然と浮かび上がってしまう。君は僕の顔を「ん?」と疑問符と共に覗き込む。僕も少しだけ首を傾げる。特に君の瞳から目を逸らす必要性は感じない。
君は自然とアクリルの手摺の上に目を落として、僕の中指の先と君の薬指の先の間に横たわる空隙に気づく。その空隙は五センチメートル。長いのだろうか。短いのだろうか。
そのアクリルの上の断絶に、電流は漏れて、見えない火花が散っている。
そして、君はその右手で手摺を握ったまま、もう一度、僕の顔を見上げた。
「魚。一杯だね」
「そうだね。水族館って感じがするね」
僕は斜め上に視線を動かす。水槽の青い世界の中の魚たちの群れを視界の中心に据えた。君の方を見ていなくても、君が同じように青い世界を見詰めているのを、僕は周辺視野で知覚している。
何十匹という多種多様な魚が大きな水槽の中で駆け巡る。
――ユラリユラリ、スルリスルリ、ドルッドルッ
小さな魚は群れを成す、大きな魚は一匹で泳ぐ。数匹で泳ぐ中程度の大きさの魚も居る。その内、どの魚がオスで、どの魚がメスなのかは僕には分からない。魚のことは詳しくないのだ。でも、この水槽の中でメスの魚とオスの魚が交尾をして、子供を生むってことくらいは分かる。
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