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彼氏に甘える女子高校生の、なんとも退屈そうな声だ。
振り向くと、僕の右隣で幼馴染の西条結衣が、右手に持ったスマートフォンで水族館の案内アプリをスワイプしていた。
結衣は既に魚群の観察に興味を失ってしまったようだった。黒髪のポニーテールを背中にぶら下げながら、彼女の視線は既に、鮮やかな青い水槽ではなく、煌々と光るスマートフォンの画面に吸い寄せられている。
画面が切り替わる毎に自発光する画面の光に照らされて、結衣の顔は暗がりの中で不気味に浮かび上がっていた。
西条結衣は僕の彼女でもある。
小学校一年生の頃からの幼馴染だが、高校二年生の秋、文化祭の季節に、彼女が僕に告白してくれた。僕がそれを受け入れたので、正式に彼氏彼女として付き合う事になったのだ。
中学生の半ば頃から彼女の中では僕に対する友達としての感情が、恋心に変わっていたという。そう彼女自身が言っていた。僕自身は、彼女の変化に全く気づかないまま、実は、三年以上の時間をのうのうと結衣の隣で友達として生きていたのだ。鈍感にも程があると言ったところだろうか。
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