アクリルの上で火花が散る

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 彼女に告白された時、正直に言って、驚いた。でも、同時に、もちろん嬉しくもあった。だって、誰かに面と向かって「好き」って言われるなんて、人生の中でもそうそうある話じゃあない。少なくとも僕にとっては初めての経験だったのだ。  幼馴染と彼女という存在の違いは一体どのようなものになのか? そういうことさえまるで分からないままに、結衣の告白を受け入れて、僕達はカップルになった。 「お土産屋さんにはもう行ったし、売店にソフトクリームでも食べに行く? あ、このペンギンさんのソフトクリーム可愛い!」  スマートフォンの館内マップをクリックして出てきた売店のページを、結衣は僕に見せつける。僕は右手でそのスマートフォンを受け取って覗き込んだ。  きっと今、暗闇の中でスマートフォンの光に照らされて、僕の顔も不気味に浮かび上がっているのだろう。心の無い幽霊のように。 「結衣は食いしん坊だからなぁ」 「いいじゃん。何も水槽の中の魚を食べちゃおうって言うんじゃないんだから」  そう冗談を言って、結衣は悪戯っぽく唇を尖らせた。 「しかも、これ、販売時間と数の制限あるみたいだから、早く行かないと売り切れちゃうかもしれないんだよっ~」  僕は「わかった、わかった」と溜息をついて、スマートフォンを結衣の胸元へと突き返す。限定商品とか正直どうでも良い。     
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