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「あ、ペンギン・ソフトクリームだろ? 俺もそれ食べたい。来る前にブログで見てたんだった。絶対並んでると思うぜ。名物だから。俺の見てたブログだと平均十五分待ちだとか言ってた」
結衣の言葉を耳聡く聞きつけた柾尋による援護射撃が僕の背中の方から飛んでくる。柾尋は僕と違って限定商品に弱い男だ。以前「そういうの女々しいぞ」って言ったら、「性別どうこう言うのは差別だろ」と、真っ当な反論で怒られたのを覚えている。それは確かに一理あったので反省した。
「都も、もう切り上げて、売店の方に行かない?」
柾尋がお願いをするように、津倉都の顔を覗き込む。君は少し困惑した表情を浮かべて、少しだけ考えるように首を傾ける。
でも、きっと、こういう時、津倉都は断らない。
高校二年の時に付き合いだした成田柾尋と津倉都。二人と同じクラスになってから、柾尋と君の仲の良いところを毎日目にするようになり、半年が過ぎた。僕も大体、二人の関係、行動パターンは理解してきたつもりだ。
津倉都は、柾尋を立てて、彼の意見を尊重するのだ。一方で、柾尋は自分から率先して君の荷物を持ったり、優しい声を掛けたりする。その一方で、時々衝動的に動く柾尋の我儘を、笑顔で許容するのが君。その調和の取れた関係こそが『学年で一番のお似合いカップル』と呼ばれる所以なのだ。
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