アクリルの上で火花が散る

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「でも、深海魚コーナーは、出来たら見ておきたいんだけど? 僕、結構、楽しみにしてたし」  僕はそう言って、アクリルの手摺に左手を突いたまま、体の面を柾尋の方に向ける。君の肩越しに柾尋と目を合わせる。僕の周辺視野の中で、君が曖昧な笑顔を浮かべているのが知覚される。 「え~、でも、ペンギン・ソフトクリームは要チェックだよ~っ!」  今度は、僕の背後から結衣が唇を尖らせた。二メートル先では柾尋が、そうだそうだ、と何度も同調するように頷いている。僕は右手で頭を押さえて「どうしたものか」と少し思案する。 「都はどっちなの? ペンギン・ソフトクリーム行く? それとも、深海魚が絶対に見たい?」  柾尋が、少しだけ前屈みに、津倉都の顔を覗き込んだ。  ――いや、それは狡いだろ、柾尋。  案の定、少し困った表情を浮かべた後に、津倉都は優しい笑顔を作って、寛容な言葉を吐き出すためだけに唇を動かし始めた。しかし、僕はそれ越えて先回りする。君の唇が柾尋の導きに促されて音を鳴らす前に、僕は先手を打つのだ。その唇を止めるのだ。 「じゃあさ、結衣。僕は深海魚コーナーを見てくるから、先に行って、柾尋とペンギン・ソフトクリームの列に並んでおいてよ」     
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