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夕陽でぼんやりとオレンジ色に染まる音楽室で、私は後ろに手を組んで一人ふらふら歩きながら、壁を見上げていた。
壁の上の方に飾られた、作曲家たちの絵や写真。
その中に、日本人のおじさんの写真があるのを見つけた。ちょっとかがんだように、楽譜を手にしている。
「誰、あんた」
白黒写真に向かって言ってみても、答えはない。
どうしてそのおじさんがそんなに気になるのか分からなかった。でも、おじさんが他の作曲家たちとは違って、威厳も何もなさそうな顔で、ただむっと楽譜を眺めているのが、なんだか目についた。
モーツァルトやベートーベンくらいなら知っているけど、このおじさんは初めて見る。中学の音楽室に、こんな人は確かいなかったと思う。そんなに有名な人じゃないのかもしれない。
そもそも、私は音楽に興味がそんなにない。
小さいころ、近所のお姉さんがピアノを習っているのに憧れて、親にねだってはじめたものの、一年も経たずに辞めたくらいだ。
そんな私がどうして音楽室にいるかというと、ただの時間つぶしだった。この三日間、放課後には、高校に入ってはじめての二者面談が行われていて、あと二十分で順番がくる。どうせ時間もおしているだろうし、学校をぶらぶら探検しているのだ。
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