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 室伏さんは、ケースを開けて楽器を取り出した。小箱から木の板を取り出して、吹き口のようなところにねじで留めていく。そしてかちかちと組み立てていく。黒くつやっとした棒に、銀色のボタンがたくさんついていた。 「それ、何ていう楽器だっけ」 「これは、クラリネット」 答えると、室伏さんはすうと息をすって、楽器を吹いた。指が高速で動いていて、低い音から高い音までなめらかに繰り出される。 「中学から、やってるの?」 音が途切れたときに聞くと、室伏さんはぷはっと口を楽器からはずした。 「そうだよ。中学ではじめて、この高校の吹奏楽部に憧れて入ったの。この学校は、成木作品で有名だから、入れて嬉しいんだぁ」 「え、何?」 「成木先生の曲を、この学校よく演奏するの」  さっき私が見ていた、おじさんの写真を室伏さんは指さす。
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