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演奏会の日。わざと寝坊をした。
本当のところ、目は覚めていたし、もう出ないと間に合わないって分かっていた。でもごろごろしている。だって、私は音楽には興味がない。
あの日の、しんとした音楽室を思い出す。白黒写真のおじさんの何も考えていないような顔と、室伏さんの上気した顔が交互に浮かぶ。室伏さんが、あそこまで言うおじさんの曲。どんなものなのか聴いてみたい。聴くだけなら。そう言い聞かせて、急いで着替えて玄関を出た。
ホールにつくと、ちょうど最後の曲が始まる前だった。
「急いでください」
ドアを開いてくれた係の人が、ささやき声でせかす。するりと潜り込んで、一番近い椅子に座った。
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