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サエカはくすくすと笑いながら言葉を続けた。
「あのオトコ、あんたとあたしに支払う義務がある書類にサインして、自分だけ助かる方を選んだわ。ははは、ほんとうに、ほんとうに、どうしようもない、ははは、ほんとうにもう……」
自嘲なのか嘲笑っているのか悲しんでいるのか、おそらくサエカ自身もわからないだろう。ユウコも同じ気持ちであった。
ひとしきり嗤ったあと、サエカは大きく息を吸い気を落ち着かせた。
「これで踏ん切りがついたわ」
サエカはユウコをしり目に、部屋の角に置いてあった自分のカバンからスマホを取り出した。
そして、どこかに連絡して通話を切り、ふたたびユウコの前に戻った。
「さて、5700万を2人でパパに払わないとね」
サエカはユウコを見てにやにやとした。ユウコはサエカが何を考えているのか分からなかったが、何か不穏なものだけは感じていた。
「どうするつもり」
サエカがこたえる前に、ユウコはいつの間にか部屋に来ていた屈強な男達にクスリを嗅がされ、眠りに落ちた。そしてそのまま部屋から担ぎ出されいった。
サエカは無言のまま、それを見送った……
ーーオンナとオンナ 終りーー
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