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平日の午後、仕事が一区切りついたタドコロは、遅めの昼食を摂り一服していると、机の上のインターフォンが鳴った。隣室の秘書からの連絡だった。
「社長、スギヤマという方が受け付けにおみえですが、如何致しましょう」
「ああ、通してくれていいよ」
返答したあと、さらに二 三、秘書指示してタドコロは来客を待った。15分後、秘書がスギヤマを連れて入室してきた。
「おい、ユウコと、奥さんと別れたってほんとか?」
挨拶もそこそこに、スギヤマは開口一番そう訊いた。タドコロは ああ とだけ乾いた声で応える。
「どうしてだ? あれだけ仲好かったじゃないか、ユウコから[別れた 詳しいことはタドコロから聞いてくれ]というメールが来て、それから連絡がとれなかったから来てみたんだが……」
自分がいるのにも関わらず、一方的に話すスギヤマに秘書は面食らっていたが、タドコロの合図で目礼して退室していった。二人きりになったので、タドコロは応接用のソファに移り、スギヤマを促した。
「どうしても赦せないことがあってな、サエカと一緒に出ていってもらったよ」
「娘も? いったい何があったんだよ、あんなに溺愛してたじゃないか」
「そうだな」
そう言ってタドコロはスギヤマに出会った頃からを話し始めた。
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