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どのくらい経っただろう……
スギヤマはユウコのなかに放出すると、我に戻ったのか、そそくさと帰っていった。
あとに残されたユウコは、しばらく動けなかった。
ようやく立ち上がると、着物と髪の乱れと涙でくしゃくしゃになった顔を直すため、着物を脱ぎ、簡易シャワー室で洗い流した。
すべてを忘れて流してしまうために。
そして夜が終わり、朝が来た。
タドコロが起きてくると、ユウコは何事も無かったように接したが、 葬儀がはじまり読経の中、ユウコは遺影を見ることだけはできなかった。
葬儀のひと月後、タドコロからユウコに結婚を申し出た。あれ以来、スギヤマは顔を現さない。ユウコはすべてを忘れて生まれ変わる気持ちで、申し出を受けることにした。
式は、ハワイでユウコの家族とだけで挙げ、そのままハネムーンとなり、2人は結ばれた。
帰国してふた月後、ユウコは体調の変化に気づく。
全身が震えた。
早い、まだ2ヶ月なのに。
確かめるのが怖かった。
早く決断すれば、もしかしたらこんな未来は無かったかもしれない。
しかし、ユウコが選んだのは、事実から目をそらすことで、その結果が娘に拘束され不倫を責められる、今なのだった。
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