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アイスクリームの蓋を剥がすように離れると、タドコロはきびすを返し部屋から出て行こうとした。
その雰囲気を察したユウコは、タドコロに話しかけようとしたが、声が出てこない。
「あ……」
あなた、と言いたかった。タドコロは聞こえなかったのか、そのままドアノブに手をかけ出ようとしたとき、少しだけユウコを見た。
侮蔑
言葉では知っていたが、そんな視線を受けたのははじめてだった。タドコロは何も言わず足も止めず、そのまま出ていく。
そのあいだに、サエカは脱いでいた衣服を身に付けていた。
「さてと、そろそろ終わりにしようか」
サエカはタドコロから受け取った書類をユウコの前にさらした。
「これはね、あんた達への慰謝料の請求書よ。
パパへの不倫の慰謝料200万、
誘拐の身代金の返済1000万、
あんたがスギヤマに渡したカネ500万、
あたしの養育費3000万、
それとあたしへの慰謝料1000万
しめて、5700万」
3枚とも同じ文面だが、誰が払うかで別れていた。タドコロシンヤに対し、スギヤマシンヤかタドコロユウコかタドコロサエカに。
「スギヤマにね、選ばせたの。5700万支払うのを誰にするかをね、そしたらね」
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