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やっぱり拾ってあげよう。
そう思い、電車の扉が開き、席を立ったときだった。
突然、ばねが跳ね上がるようにして彼女が顔をあげ飛び起きた。
目をぱちくりと開き、そしてその瞬間に到着した駅を確認したのだろう。
ものすごいスピードで鞄を抱え、そして床に落ちた手帳を拾いながら、彼女は俺の横を走りぬけていった。
それは一瞬のことだった。
俺があまりの速さに茫然としながら駅に降りたときにはもう彼女の姿はなかった。
きっとそのままの勢いで駅の階段を下りて行ったのだろう。
変な女の人だと俺は思った。
それでその後は特に彼女のことを思い出すこともなく、俺は日常を過ごしていた。
けれどちょうど、一週間後。同じ時間、同じ電車で再び彼女と出会った。
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