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友人
僕には付き合って3年になる紗弓という彼女がいる。
感覚的にはもっとずっと前から交際しているような気がする。
それほど二人は打ち解け、夫婦に近しき関係だったのだろう。
僕と彼女は付き合ってすぐに同棲を始めた。
彼女は口数が少なく、僕が話しかけると、
いつも優しく微笑む。そんなところも僕は愛していた。
僕は彼女といるだけで、毎日を幸せに過ごしていた。
そんなある日、家のチャイムが鳴った。
「おーい、渉(あゆむ)いるんだろー?」
友人の健(たける)の声だった。
渉とは僕のこと。最近は仕事以外では外に出ていない。
友人から連絡も来ていたが、返事をしたりなどが面倒なため、
最近は一切返していなかった。
それを心配して健が来たのだと思う。
僕は彼女がいれば、何もいらない。そう思っている。
今回は居留守を使うことにする。
彼女も僕の性格を理解しているからか、何も言わずに
「またですか。」と言うように、微笑んでいた。
「おーい、引きこもり!!」
まだ諦めていなかった健の声と共に、ガチャっという
明らかにドアの開いた音がした。
仕事から帰ってから鍵を閉め忘れたのだ。
「ほら、渉いるじゃんか!なんで居留守してんだよ!」
すこし面倒だが、仕方がない。健の話は適当に流して、
さっさと帰ってもらうか。と、思っていてが、
この健の訪問で、僕は目を覚ますことになるとは
今はまだ知る由もなかった。
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