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独りは寂しいけど、誰かと関わると摩擦が起きる。
ペットの魅力がわかるからこそ、飼うとか飼わないとか考えたくなかった。
「お姉さん」
彼女が優しく腕を回した。
「私がいなくても、結婚しなくても、独りにはならないよ」
そっと私の背中を撫でる。
「きっと、皆そのことを知ってるから」
すると、私は急な眠気に襲われた。
「一回、ちゃんと話してみて」
私の瞼は重くなり、彼女の言葉とともに深い眠りへと沈んでいった。
あれは夢だったんだろうか。
ズキズキとする頭で昨日のことを思い返す。
起きると、彼女もネコもいなくなっていた。
確かに色々と不可解な出来事だったけど、現実だったらいいのになって思う自分もいる。
「サワラさん、どうしたんですか? ぼーっとして」
同僚のムツくんに声を掛けられて、我に返った。
「ちょっと夢のことを思い返してて」
「夢? どんな?」
「喋るニンゲンに会って、ペットになって欲しいって泣きつくっていう……」
「何ですか。それ」
夢の内容を話すと、笑われた。確かに変な内容だけど、ちょっとだけ気分が悪い。
『ちゃんと話してみて』
ふと、彼女の言葉を思い出す。
「――最近、精神的に参ってたから。その、結婚の話ばかりされてて」
ぽつりと、そんな言葉が零れる。
「皆、私が早くここから居なくなって欲しいのかな、なーんて」
零れると、どんどんと溢れてきて、隠すつもりだった心内まで見せてしまう。
「そうだったんですか。だったら、皆に言っときましょうか?」
恥ずかしくて死にたくなった私に対して、ムツくんは特に何か感じることはないようだ。
「だって、言いにくいでしょ。大丈夫ですよ。上手く言っときますから」
「あ、ありがとう……」
少し気持ちが軽くなったし、思ったよりあっさりと事態は好転するかもしれない。
ちゃんと気持ちを伝えたのは正解だった。
また、夢の中の彼女のことを思い返す。心の中で彼女にもお礼を言った。
ムツくんが「そうだ」と声を弾ませる。
「週末、動物園でも行きません? せっかくだからニンゲン見ましょうよ。ニンゲン」
私は少し考える。頭の中のスケジュール張に予定はない。
「そうだね。見に行こう」
笑顔でそう返事をした。
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