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薄い音符
藍はいつだってうんうんとうなずきながら僕のちょっと後ろを歩く。少し微笑みながら。かなり満足そうに。
「なんで?」
「えっ?」
「並んで歩けばいいのに」
「あっ、ごめんね」
「また、あやまってる。別に、あやまれなんて言ってないじゃん」
「そうだね、ごめん」
だからさぁと渋い顔をする僕のことなんてまるでお構い無しに、藍はうんうんとうなずきながら小さく微笑んでいる。僕はため息をつきながら周囲を見渡す。廊下でも、教室でも、快活な音符達が楽しそうに踊っている。それぞれがジャンプしたりぐるぐる回ったり必要以上に騒いだりしながら、それぞれの青春の曲を演奏している‥‥
藍は地味だ。それなりの女子の友達もいることはいるが、その輪の中では、話したり笑ったり騒いだりなどのコミュニケーションを積極的にとるタイプではない。とりあえずそこにいて、なんとなく静かに漂っている感じだ。僕にはそう見える。
‥‥藍は
‥‥藍は薄い音符だ。
‥‥
‥‥まあ、僕も藍のことを言えないけれど
‥‥‥‥
‥‥‥‥
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